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2012.08.20 06:15




こんにちは~~

ここ最近の続き物、こちらでラストです。
最後の数十行は…すみません、自分でも本当はいらないと思ったのですが付け足してしまいました。やる気がないのでひどい文章になってますがすみません。

薪さんのお葬式……すみません、青木さんが出すと思ってました。←!!!
思いもかけない方が突然亡くなるのはつらいですよね、本当に大変でした……


そんなわけで、
よろしかったら追記からお付き合いください。

















 通夜振る舞いの後片づけも済んで、すっかり静まり返った斎場に薪は一人残された。
 祭壇のある部屋のすぐ隣に畳敷きの小部屋があり、通夜の夜親族はそこで一晩過ごすのだという。
 本当は夜通し付き添って線香を焚いていなければならないらしいが、葬儀の担当者から渡されたのは一度火を付ければ8時間は持つというまるで七夕飾りのような形をした線香で、だから薪は教えられた通り、その何重にも巻かれた線香の端に火を点した後に、今夜一晩己が所有する部屋に引っ込んで上着を脱いだ。

 八畳ほどの部屋には押入れに布団が数組と、奥の端には小さなテーブルにお茶のセットと座布団が重なって置かれていた。
 柱に掛かった時計を見上げれば、針はもうすぐ11時半を指そうとしていた。いつの間にこんな時間になっていたのかと薪は思う。

 ほんの数日前までは想像もつかなかった事態に今自分は置かれていると薪は思った。
 本当ならば、今夜は旅行帰りの父母が出先で求めてきた名産物が食卓に上がり、薪はその前で二人の土産話に頷いていたはずだった。
「これ、鈴木くんにね…剛ちゃんがいつもお世話になってるから」
 と母から何かの包みを渡されれば、
「ありがとう」
 と友人の代わりに礼を言って、でも少し困ったように笑っていたはずだった。

 どうしてこんなことに、でも初めから今日こうなることは決まっていた気もする。

 午前零時になれば正面のエントランスが自動で施錠されると聞かされているから、シャワーを浴びて休むのはそれからにしようと、でもそれまでいったいどうして過ごそうかと考えている内に、部屋のふすまの遠く外からあり得ない足音を、微かにしかし確かに聞きつけて薪は不審そうに振り返った。
 誰も尋ねてなど来るはずなどないのに、小走りする靴のかかとの音が薪のいる部屋めがけて近づいてくる。気味が悪くなって、薪が腰を持ち上げかけると、果たしてがらりと開いたふすまの向こうに普段着に着替えた鈴木が立っていた。

「ごめん、遅くに」
 驚愕しきった薪に、鈴木が申し訳なさそうに言う。走ってきたのか彼の頬は上気して息も早かった。
「どうして」
 と薪が訊く間もなく、鈴木は急いで脱いだ靴も放ったまま躊躇いなく畳に上がると、驚きに見開かれたままの薪の瞳を張り付けながら彼の正面に座った。つられて薪も腰を落とす。薪の肩越しに部屋の中を見渡した鈴木は、奥に座布団を見つけると膝で歩いて二枚取って返すと一枚差し出して薪をその上に座らせた。自分も使う。
「どうして?」
 と、落ち着いた途端に薪が訊く。それはそうだろう、もう通夜は終わって、遺族の薪とは違ってただの参列者の鈴木にはこの場所にもうどんな用もないはずだった。
 驚きと不審そうな薪の視線に頓着せずに、鈴木は持参してきたバッグの中から拳ほどの大きさのアルミホイルの包みを二つ出してきて、「ほら」と薪に持たせた。
「なに?」
 膝の上でそれを受け取りながらまた尋ねた薪に、鈴木はしっかりと一度頷いてから、そのうちの一つを取り戻して丁寧にアルミ箔を解くと、中からはまっ白な握り飯が艶々と光りながらまだ微かな湯気を上げたのが現れた。

「ご飯……お前、通夜振る舞いの時も全然食べてなかったみたいだから」
「そんなこと」
 思いもかけないものを差し出されて、思いもかけない言葉を掛けられて薪は困惑したように瞬きした。安心させるように鈴木が微笑んでみせる。
「そりゃそうだよな、寿司とか揚げ物とか肉とか…いつもだって薪はそんなに食わないのに、こんな時に食えるわけないもんな……」
「どうして、鈴木」
「具が何もなくて母さんの梅干し漬けだけだけど、飯は炊き立てだぜ、冷めないようにアルミに包んできたし……」
「どうして?」
「麦茶も…ちゃんと煮出してきたんだ、薪、そのほうが好きだろ?」
 薪からの「どうして」の問いには答えずに、鈴木はバッグの中から今度は銀色の保温ポットを取り出す。
「食えよ、薪」
 それから、テーブルに備え付けの湯飲みに湯気の立つ熱い麦茶を注いで差し出されて、薪はこくりと頷いて、手に持った握り飯を一口かじった。それを見て鈴木が微笑む。そういえば、警察から連絡が入って以来もう3日も薪は食事らしいものを摂っていなかった。

 二口三口と薪が握り飯を口に入れる。噛みしめる薪の口元と段々小さくなっていく白い塊をじっと見つめながら、鈴木は薪のために湯飲みの中のお茶を冷まそうと息を吹きかける。
「うまい?」
 と鈴木に訊かれて、
「あったかい」
 と薪が答えたら、嬉しそうに鈴木は笑った。

 ひとつ目を食べ終えて、もう一つの包装を解こうとした鈴木を薪が止める。
「もう十分、ありがと、鈴木」
 頷いて、鈴木はそれ以上勧めなかった。代わりにすっかりぬるくなった麦茶の茶碗を握らせると、薪は黙ってそれを啜った。薪の横顔を見ながら鈴木も自分で一口啜る。
 ふうと大きく息を吐いて、薪は肩から力を抜いた。

「変なこと話してもいいか? 鈴木」
 唐突に薪がそう話し出したのはずいぶん長い沈黙に鈴木が当然と付き合っていた後だった。勿論とでも言いたげに鈴木は頷いた。鈴木から視線を逸らしたまま、薪が嬉しそうに口の端を持ち上げる。
「幼稚園の頃かな? 母さんに『一番好きな人はだれ?』って訊いたことがあったんだよ、ぼくが一番好きって言ってもらえると思ってさ……『お父さん』って即答されたけど……」
「……………」
「父さんにも『一番大切な人はだれ?』って訊いて『お母さん』って即答されて……それから何回かおんなじことを訊いてみたことがあったけど、一度もぼくって答えてもらったことなかったな……」
「薪」
「夫婦なんだし、今は当然のことだと思うけど、子供の時は悲しかったな…他の友達はお前が一番好きで大事って言ってもらってたの、知ってたし、なんでぼくは、って………正直すぎるんだよね、あのひと達…嘘でもよかったのにさ……まさか二人いっぺんに死んで、しかも事故なのにあんなに幸せそうな顔とか、なんかもう、ぼくなんか本当は最初からいらなかったみたいで………」
「薪」
「でも、それでもぼくにはやっぱりかけがえのない両親で……」
「薪」
 俯いて言い募る薪の肩に手を伸ばして鈴木は彼の体を自分の胸に引き寄せた。急なことに抗えなくて、薪は鈴木の思い通り彼の腕に抱き込まれる。鈴木はそれ以上薪が何も話せないようするみたいに彼の肩を自分の胸に押し付けた。

「どうしよう、鈴木……」
 半分腰の上がった不安定な姿勢のまま、鈴木の肩の上に顎を載せてあおぐように薪は言った。
「どうしよう、鈴木、ぼく、ひとりになっちゃった」
「だいじょうぶだ、薪」
 おれがいてやるから、と鈴木から、耳元でそう言われて薪は脇に力なく下げていた腕を鈴木の背に回して、まるで縋りつくみたいにその手指に力を込めた。


 父母をたった一人で見送って、薪が職場に復帰したのは1週間後だった。
 突然のことにご迷惑をおかけしましたと頭を下げて回る彼に掛ける言葉もなく、みな一様にただお辞儀を返した。

「本当に、今回の件では鈴木に教わったことにずいぶん助けられたよ」
 職場内の食堂で、久方ぶりに鈴木と向かい合って座った途端そう言いだした薪の頬にずいぶん赤みが戻っているのを確認して、鈴木はほんの少しだけ安心する。
「お葬式の進行知ってたから打ち合わせもスムーズだったと思うし」
 手続きやら何やらでこの1週間の薪は本当に忙しかった。気に掛けて鈴木が己も忙しい仕事の合間を縫って何度も彼を訪れたがそのたびに、忙しく事後の片づけをする彼が鈴木の前で悲嘆に暮れた様子を見せることはなく、弱音を吐いたのは通夜のあの一度きりだった。
「菩提寺とか全然心当たりなかったんだけどさ、父さんが去年買ってた公園墓地の管理会社に紹介してもらえて…」
 今は悲しむ間もない薪が本当に両親の死を目の当たりにするのはもう少し後のことになるのではないかと、そしてその時の薪の事を思うと鈴木は本当にいたたまれない気持ちになる。
「あのお坊さん、檀家でもないのにすごく熱心に説教してくれたよね」
 鈴木に明るい声を聞かせる薪にも。
「………父さんたちの部屋とか、後はゆっくり片づけていこうと思ってる…今は新しい研究室の立ち上げで精いっぱいだし」
 だからしばらくの間でも、仕事の忙しさで紛れるならそれも良いことだろうと鈴木は頷いた。

「食事中にすみません」
 と、話していた薪と鈴木に後ろから声を掛けてきたのは同じ部署の上野だった。
「なに?」
 と鈴木が顔を上げて、連れて薪も視線を上野に投げる。上野はぺこりと頭を下げた。
「所長が薪さん呼んでます、今応接室で、なんか長官もいらしてるみたいで」
「なんだろう?」
 思いもかけない急な呼び出しに薪の表情が硬くなる。
「急ぎかな?」
「多分」
 立ち上がりかけた薪に、
「片づけておくから」
 と鈴木が声を掛けるのに薪は頷いて応えた。
「ありがとう、上野」
 去り際に律儀に礼を言う薪の背中がひとに紛れていくのを、鈴木はじっと見送った。

「薪です、失礼します」
 呼ばれて入った部屋は、滅多に来たことはなかったがずいぶん照明が暗いような気が薪はした。
「すまないね、急に」
 と、腰を上げた所長の田代の後ろのソファにはぞんざいな様子で彼らの職の頂点にいる人が座っていた。薪が深く腰を折ってみせる。そのひとは満足そうにうなずいた。

 それから、こほんと一つ咳払いして、田代が話し始めた。
「これが良い機会…といっては君に失礼なことは十分承知しているのだがね、かねてから懸案だった新しい研究室の…『第九』の室長に君を、と長官はおっしゃっているのだよ」
 硬い表情のまま、薪が瞬きする。
「『第九』の室長はある意味とても危険な仕事だ、だから家族、親族のいない君ほど最適任なものはないんだよ……」








(終わりです)
最後、なんだこれ? な話ですみません。

ここまでお付き合いいただいてありがとうございました。


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この記事へのコメント

今日から夏休み

おはようございます

なんつー露骨な・・・田城さん、あのタヌキ顔でそんなことを。 あ、それで、貝沼事件の後、田城さんにあんなつんけんしてたんですね。家族もいなくなったけど、部下もみんないなくなっちゃいましたよって←ひどい。

薪さんの家族萌え(?)は死ぬときまで仲睦まじかった両親の影響なんですね。幼い頃から寂しかったから、というより、家族の理想が自分の両親というのは、とてもステキですね。ああ、一体、何%の人がそういう親を持っているんだろう・・・・・・。

でも自分は鈴木や青木といちゃついてるんだなあ。死んじゃうと悲しいから、本当に家族にならなくてもよい相手じゃないとだめなのかもしれませんね。

あれ、それでは今の青木の立場は・・・(@@;

薪さんの人格形成の貴重なお話をありがとうございました。

| 第九の部下Y | URL | 2012.08.20 09:56 |

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