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2007.01.01 12:35


こんにちは。

本日リアル日付では2012.02.02でございます。 明日は節分ですねぇ。

こちら、一瞬お題を「君はブルーローズ」というのにしようかな?と脳裏をかすめたのでありますが、
何でかと言うと、駄文作成のきっかけの一つがF岡教授がご著書の前書きに書かれていた、「青いバラを作ろうと遺伝子操作をして、やっと出来上がった『青いバラ』はどこから見てもツユクサだった」というのを拝読いたしまして、ひとは求めていたものとまったく違うものを完成させて、気づかずにいることもあるんだな、と。

はい、これはそういう話もちょこっと入っているつもりです。


すみません、ただのパラノイアな話です、ごめんなさい。














 あの時の薪の笑顔と話の内容を思い出せば、安穏な薪の横顔を前にしてさえ鈴木の心にはうっすらとした靄のような、もしくは雲か霞のように白茶けて不鮮明なきりが覆い被さって来る。

「お前以外なら要らないんだ」

 ああ、それは、薪、お前だけじゃない、おれだって、心底そう思っているんだよ?

「政治家になるんだ」

 そう宣言した薪の、瞳はきらきらとまるで太古から大切に守られて形成された宝石の如く輝いて、その眩しさに鈴木の瞳は眩みそうになる。

「ほんとは一日中鈴木の顔が見えるとこ以外なんて嫌だけど、だったら何を目指したっておんなじことだし、それに……」

 なんてことだろう、寸分違うことなく、鈴木も同じことを思っていた。薪が居ないなら、彼の姿が見えない世界なら、それは皆同じく無意味なものだ。
 薪を得てから、鈴木はそれまで持っていた世界の全てを失った。薪以外のものは、それが世間一般的にどんなに素晴らしく重要なものであろうともすべて色を失ってその価値を失くした。しかしそのことに後悔なんて鈴木は一片も感じたりしない。

「ふ」
 突然深く吐き出された薪の寝息に、鈴木は驚いたように瞬きした。それから、瞳を落として、薪の眠りが未だ深いことを確かめてから、息の拍子に耳たぶから零れ落ちた絹糸の髪の一束を、母猫の舌のように指の先で戻してやりながら、薪と初めてこうなった時のことを思い返した。


 あの頃は、薪にも鈴木にもそれぞれ彼女と呼ばれる立場の女性が居た。
 確か金曜の夜ファミリーレストランで、鈴木の当時の彼女と3人で遅い食事を摂っていた。ウエイトレスに届けられた料理の鉄板に不注意に触れた鈴木が熱いと小さく叫んだのだ。

「何、やってるんだよ」
 向かいに座った薪がカトラリートレイに手を伸ばしたまま呆れた声を出す。彼女は洗面に立っていた。
「………やけどしたかも」
 中指の第一関節を、冷ますように細めた唇でふうふうと息を送る鈴木に、どこ?と薪は訊いた。
「ここ」
 と、鈴木は中指の横腹の、ほんの少し赤色が点った個所を薪に指し示す。

「見せて」
 自分に向けて差し出された、薪の手の平の上に鈴木は従順に指を載せた。
「うん…赤くなってるかな?」
 自分の目の前に差し向けられた素直な鈴木の指先を、手に載せたまま検分するように、椅子から腰を少し浮かせて、見ていた薪は急にそれを自分の口の中に入れた。

 バラの花弁で作られたような唇を開いて、鈴木の指を招き入れては慎重に閉じられたその内側で、ベルベットを逆立てるような感触の舌で、さっき目で見た鈴木の指についた赤い熱の跡を辿る。繰り返し。

「うん、大したこと無いんじゃないか? ツバ付けとけば治るレベル」
 何度か、舌先で傷口をこそげるように舐めた後、口と手を急に放して薪は言った。遠くに鈴木の彼女が戻りかけていた。
「鈴木、気をつけろよ、まるで子どもじゃないか」
 最後はまったくバカにした口調で、鈴木に自由を返した薪に、彼は急いで次の日の約束を取り付けたのだ。

 その翌日の夕方に、求められた通り、当時鈴木が一人住まいしていたアパートを訪れた薪は行き慣れた部屋の玄関で、その日に限って入ることを躊躇った。
 同じように鈴木も、自分が呼びつけたにも関わらず薪を己の部屋に招き入れて良いものか迷った。
 開け放たれたドアの入り口に、閂を掛けるように壁に手を着いて斜めに寄り掛かった鈴木に、薪は少し困ったように頬笑んだ。

 思い返せば、あの瞬間から、もしかしたらそれのずっと前から、こうなることは二人とも承知していたのかもしれない。

 閉じた玄関にカギを掛けるのは防犯上の理由からだ。
 けれど今日に限っては、二人で、時にはもっと多くの友人たちと、幾度も一緒に食事を摂り慣れたリビングダイニングが、錠の下りる音でそれまでとはまったく異質な密室になる。

 薪が羽織ってきた薄いコートに触れもせず、ローテーブルの脇で、立ったまま唇を重ねて、好きだとか愛してるだとか一切言わない。
 ただ、舌が痺れてくるくらいキスをし続けて、満腹になった蛭が地面に零れるようにようやっと唇を離した後に、長すぎた口付けの息苦しさとそれ以外の理由で、頬を上気させた鈴木が照れくさそうに視線を薪から床の上に移動させて言った。
「おれ、まさかおとこに欲情するとは思わなかった」

 ぼくも、と薪は笑いを混ぜた声で答えた。
 それから、いつの間にかしっかりとかみ合うように重なっていた右手と左手を繋いだまま、俯いた視線を鈴木とは違う場所に映しながら言った。
「ぼく、明日は舌が筋肉痛になりそうだ」
 おれもだ、と鈴木はきまり悪そうな声で笑って言った。









(続きます)
すーみーまーせーんーーーーーーっ。


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