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2008.04.01 06:25


こんにちは。

本日、リアル日付では2011.08.07でございます。

昨日学校のPTAの仕事で市主催の講演会に行ってきたのですよ。結構な冷房の中に2時間おりましたら、熱が出ました。 まあ、なんてか弱いわたし・・・・(あ、石投げないで) 失礼しました。


えええ、と、
続き物、これでお終いでございます。

夏になると薪さんがナーバスになって、それをなんとかしようと青木さんも毎年おかしくなるというお話でございました。


お付き合い頂ければ幸甚です。


















 男二人が休むのに、青木のシングルベッドは小さすぎた。
 でも、日に日に夏色が濃くなっていくこの時期の薪にはこの大きさがちょうどいいと、狭いシーツを譲り合うように彼の頭を肩の上の載せ、彼の体を胸の内に閉じ込めながら青木は思う。

「狭いですか?」
 と訊けば、
「狭い」
 と薪は答えるけれど、しかし彼は青木の腕の中からどこへも行かないので、何も言わなくても青木の考えなんて薪にはお見通しだと青木にわかって、彼は小さく苦笑する。

 ライナスのね、毛布みたいになりたいの。

「…なんだ、それ?」
 頭の上で呟かれた、青木の言葉が聞き取れなくて、彼の腕に抱かれたまま薪は瞳だけ上にあげて青木の表情を確認すると、彼は彼に特有の、困ったような照れたような顔で薪を見下ろしていた。
「いえね、以前…薪さんとお付き合いを始めさせて頂いたばかりの頃、おれ、自分の大きさが薪さん用なんだ、って思って、言ったの、覚えてらっしゃいますか?」
 もうずっと前の事のような、でもついさっきの事のように思い出される青木の言葉に、薪は黙ったままこくりと頷く。薪の肯定を確認して、青木はうれしそうに微笑んだ。

「体が大きいの、おれずっと嫌だったんですけど、薪さんを包み込むのには、これだけの大きさが必要だってわかったから……だから、今は薪さんが一番安らげる、シーツや毛布みたいになりたいって、世界で一番上手に、薪さんを抱き締めて眠れるようになりたい、って思ったんです」
 真摯な声でそう言う、青木に薪は瞬きした。それから小さく、
「ばか」
 と呟いて、俯きながら呆れたため息を吐いた。
「そんなの、もう、なってる」

 それはあまりに小さな声だったから、その音の振動は青木のパジャマの布地に吸い取られて青木の耳まで届きはしなかったけれど、絹糸みたいな薪の髪の間から隠れ見える彼の耳たぶがしっかりと紅い色に変わったのを見つけて青木はうれしそうに彼の体を自分の方に引き寄せた。

 ほんとはね、それだけじゃなくてね、傍にあればいつでも安心して元気が出るモノになりたいの、ライナスの毛布みたいに、絶対必要不可欠なモノになりたいんです。

「なんだかおれ、欲深だなぁ……」
 もっと寄ってくださらないと落ちますよ、なんてもっともらしく薪を抱き込みながら、自嘲するように青木は言う。
「いまさら……」
 そんなこと、とっくに知ってると、薪が呆れ顔でため息を吐けば、さっき彼が空を見ていたカーテンの隙間から半分の月が空の低い位置から二人を覗いている。

 これから晦日に向けて、月は段々とやせ細っていく。
 朔になればすぐにまた、奥ゆかしい速度でひとの目に姿を現す面積を増やしていく月は、永遠の繰り返しを教えているようだけれど、夏の盛りの望に近付いて満ちる月は決まって薪に辛く悲しい出来事を思い出させて、それは昼に生を謳歌する蝉の声にさえひたひたと忍び寄る七日後の死を感じ取るように、薪にとっては黄泉へ渡す箱舟のように見えているのかもしれないと、高く上った遠い月を遥かに仰ぎながら青木は思った。

 だから、抱き締める。
 何処にも行けないように、薪の心臓が潰れて止まりそうなときは青木の鼓動で蘇生できるように、薪の息の規則正しさを青木がすぐ耳元で確認できるように、悲しい夢もすぐに唇で吸い取れるように、そのためには薪のベッドは広すぎる。
 もっともってくっ付いて、まるでひとつになるように、溶け合うくらい、それは片方が死んでしまったらもう片方も時を置かず亡くなってしまう哀れな生命共同体のように、ちがう、薪がひとりだけで悲しくならないように。
 肩の上に頭を置いて、首に腕を回して、胸を押し付け、腰を抱き締めて、包み込む、それは最上の寝具のように、触れればいつだってたちどころに安心できて穏やかな気持ちになれる、彼にとってのそんなものになりたい。

「そういえば薪さん、この前宇野さんと捜査した連続殺人事件なんですけど」
 横になっても、いつまでも微睡まない薪の額を見下ろしながら唐突に青木は話し出した。
「うん?」
 それは奇妙な事件だった。最初別件の事件だと思われていた二つの殺人事件が、捜査が進み、実は一人の人物の仕業と思われて、しかしその真相は彼の人物を落としれるべく計画された被害者(と思われていた二者)による時間差心中だった。

「それが……?」
 どうした?と、狭苦しいスペースで、しかし従順に青木のするに任せて彼の長い指に前髪を梳かせていた薪が問う。
「あの報告書を書きながら、おれも実は考えていたんです、自分が死んでしまう時のこと……」
「……………」
 青木の最後の一言に、薪の体が小さく身じろぎして固まるのが感じられる。
 そうだ、これは今の時期の彼には言ってはいけないこと。でも、いつまでも目を背けてばかりはいられない、だってそれはどこへも無くなってはくれないのだから。
 だから青木は、すっかり硬くなってしまった薪の、俯いて青木からは見えない彼の瞳が揺れているのを感じながら青木は言葉を継いだ。

「もし……おれがどうしようもなく死にたくなったら……」
「……死にたくなったら……?」
「あ、一人では死なないですよ、そんな根性も度胸もおれにはありませんから」
 声にわざと可笑しみを込めたのに、薪の体は相変わらず強ばったままだしちょっとも笑う気配も無い。青木は続けた。
「例えばあの、事件みたいに心中したくなったり、もちろん薪さんとですよ、一緒に死にたくなったら………」
 青木の肩の上で、薪の髪は小さく震えているかもしれない。早く次の言葉を口にしなければと焦って、でも慎重に、青木は言った。
「おれは、ワライタケ喰って、その中毒で死にたいです」
「………………………」

 瞬間、薪の体が直前まで彼を戒めていた緊張とは違う理由で固まる。彼の驚きが青木に伝わる。口調に笑いを混ぜながら青木は薪に尋ねた。
「楽しくないですか?笑いながら死ぬの、薪さんと二人で、げらげら死ぬまで笑い続けるの、笑って、笑って……」
 最後は楽しくて仕方なさそうに笑い出して言葉が詰まった青木に、
「なんだよ、それ?」
 とうとう薪も吹き出すように笑う。

「幸せだと思いませんか?おれ、薪さんとだったら死ぬ時だって幸せだ」
 それは何かの判決を言い渡すように、断言した青木に薪は急に笑うのを止めた。

 それから、自分の首に回されていた腕の中で身動ぎしてその戒めを緩くさせると、狭いシーツの間を潜るように体を引きずり上げてそれまで自分の頭の上に位置していた青木の額を見下ろすようにする。
 広い青木の額と彼の漆黒の髪の上に、薪の薄茶色の髪が蜜のように滴り落ちる。琥珀色の瞳は彼の笑止と共に静かになった青木の真っ黒の瞳を見つめる。
 真摯な薪を青木もじっと見つめ返した。

「ううん」
 と、青木の瞳に視線を置いたまま、薪はゆっくりと首を左右に振った。ううん。
「今も」
 生きていても、
「しあわせになれるから……」
 青木とならと、薪はそう言おうとしたのかもしれない。しかし言葉はその途中で青木の腕に絡め取られて最後まで機能しない。
「おれもね、薪さんっ」
 そう言って欲しかったんですと、それも青木は言葉にしないで、ただ、急な所作で抱きしめられて、苦しいとか放せとか文句を言う薪を、それでも腕と胸の内に収めて不自由にさせながら、驚かせてごめんなさいと小さな声で謝った。








(終わりです)
こんなヘンな話にお付き合い頂きまして、ありがとうございました。

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| 二次創作・「青木氏と薪室長の他愛ない日常」 | コメント(3) | トラックバック(0) | |

この記事へのコメント

鍵拍手コメントくださったAさまへ


Aさん、こんにちは。
拍手コメント、ありがとうございました。 お返事が遅くなってすみませんでした。

そうですねっ、青木さんのコートならすっごく大きそう。薪さんなら二人くらい入りそう・・・とか思って、でも彼は決してデブではないのでどうなんでしょうかね?

「おれは死にません」というのは・・・・・いつかは死ぬんだよ。その決定的な真実をまやかすようなことを言うのは、ちょっとあまり好みでなくて、
なんて言いながら実はあのシーン、武○○也の「ぼくは死にましぇーん」を思い出して、ちょっと・・・・良いシーンなのに、不真面目でごめんなさい。

なんて批判的なことをエラソウに書きながら、「笑って死にたい」とかそれも、死から剥離した生をなまなましく意識しているみたいで気持ち悪くてすみません。

あ、教えて頂いたの、拝見してきました。
なんか・・・・痛かったです。それからいったい何があってこんなシチュエーションになってしまったのかを妄想したら、とってもどきどきしてしまいました。←へんたい。

拍手、ありがとうございました。
Aさんのまたのお越しをお待ちしております。

| みちゅう | URL | 2011.08.12 15:29 | 編集 |

お邪魔致します。
久々に、別枠カテゴリを、じっくり読ませていただきました。

こちらのお話。
1話目で、影で遊び触れ合う二人に、そのラヴさについ頬が緩み。
2話目で、青木の「薪さんの・・・に見える」発言に爆笑!し☆(ええもうこれからは、あのチーズはそうにしか見えませんね!^^)
3話目の、一転して静かな逢瀬に、キュンとして。
そして4話目の会話に・・二人の想いを感じて、胸がいっぱいになりました・・。

・・そしてこれは、二人だけの話のようで。
実は、二人とも言葉には出さない、けれど毎年確実にやって来るその日が奥底で意識されるから・・だからこその言葉であり行動なのですね。

昼間は、子供みたいにふざけたり、喧嘩したり。
夜になると、軽口を叩きながら、やがて互いを求め合い、そして・・優しく語り合う。
互いを慈しむその気持ちがじんじん伝わってきて、最高の恋人同士だと思いました。

はあ・・しみじみと堪能させていただきました。
今夜は、この幸せを胸に抱いて休みます。
ありがとうございました。

| かのん | URL | 2011.11.19 00:35 | 編集 |

かのんさんへ(今頃本当にすみません)


かのんさん、
こんにちは。一年ぶりです、返事の仕方忘れてます、最低です、すみません……

> こちらのお話。

すみません、自分で書いて忘れて読み返して、ぎゃーーってなりました。

> 1話目で、影で遊び触れ合う二人に、そのラヴさについ頬が緩み。

ぎゃーーーーーっ

> 2話目で、青木の「薪さんの・・・に見える」発言に爆笑!し☆(ええもうこれからは、あのチーズはそうにしか見えませんね!^^)

すみません、すみません、下品ですみません

> 3話目の、一転して静かな逢瀬に、キュンとして。

あああ、かのんさんの感受性のなんと豊かなことか…こんなものにもったいない……

> そして4話目の会話に・・二人の想いを感じて、胸がいっぱいになりました・・。

ううう…かのんさん優しい…こんな変な二人なのに…本当に申し訳ないです、ごめんなさい……

> ・・そしてこれは、二人だけの話のようで。
> 実は、二人とも言葉には出さない、けれど毎年確実にやって来るその日が奥底で意識されるから・・だからこその言葉であり行動なのですね。

やっぱりですね、鈴木さんのことは薪さんの心の中から絶対に消えなくて、普段は回復したようでも絶対にまだ傷は癒えていないと思うんです。(あまりに吹っ切ってしまったらそれはある意味薪さんらしくないというか…勝手にすみません)

そして青木さんは、絶対にそのことを理解して、そして一緒に背負ってくれる人だと勝手に思っています。だってそのために鈴木さんの脳を見たんじゃないのか、青木!


コメントありがとうございました。
ずーーーーーーっとお返事しなくて本当にすみませんでした。
かのんさんのお優しさにいつも甘えてすみません…でも本当に助けて頂いています。
もしよろしかったらこれからもどうぞよろしくお願いいたします。

| みちゅう | URL | 2012.11.17 08:17 | 編集 |

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