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2008.03.15 05:55



こんにちは。

本日、リアル日付では2011.07.15でございます。毎日暑いでございますね。

皆さま、どうかお体にはお気をつけてください。


で、すみません、
ちょっと薪さんが変な事言ってます。

わたしは~~~~~あまり薪さんには喋って欲しくない方なのですが、だって天才なんてどんな話するかわからないし、でも、すみません・・・・・

あと、伝えたいことにオブラート、というか直接言わなかったら、よくわからない話に・・・・・ごめんなさい。

広いお心でお願いいたします。


















 しばらくの沈黙の後、
「……………あのな、青木………」
 それはすっかりあきれ果てたような声で、薪は彼を呼んだ。
「青木、いくらなんでもその言い様はひどくないか?」
 おまえの可愛い姪っ子だろう?と、ため息と一緒に薪から言われて、そんなこと、言い出した本人の青木が一番よく知っていたのに、それでも己の非などまったく認めたくないとでも言うように、青木は抱えたままの頭を左右に振った。
「嫌です、舞でもだめです、薪さんに…薪さんからあんな風に笑い掛けてもらえるのは……」
 それは自分だけの特権だと、どんなことをしても譲れなくて、青木はなお駄々をこねるように言った。
「だって薪さんてば、本当に、おれだって見たこと無いくらい優しい顔してて……膝の上に乗せた舞が可愛くて仕方ない、って顔で、それが、それは………」
 それから、青木はそれまで目を背けて、しかし本当に今の自分を苦しくしていた考えに到達して、
「それは、まるで………まるで薪さんが………」
 認めたくなくて、でも一度心に浮かんでしまったからには、どうしても目を瞑ることが出来なくて、しばらくためらった後に、おずおずとした口調で、顔は相変わらず薪から逸らしたまま、
「薪さんが…お父さん、みたいに見えて………」
 最後は蚊の鳴くような小さな声で、青木は言った。

「おとうさん?」
 青木の深刻な様子に要領を得なくて、少し抜けたような声で薪が青木の言葉を繰り返すと、俯いたままの青木はこくりと頷いた。
「ぼくが?」
 訊き直した、薪の声は少し笑っているように青木には聞こえて、その軽い声色が青木を一層悲しくさせる。
「青木、おまえが何を言っているのかわからないな、第一に倉辻さんの一家と親しくすることはおまえが、希望して」
「そうじゃないんです」
 そうじゃ、とさっきまでの力無い声とは真逆の強い声で、青木は薪の言葉を遮った。

「……………………」
 遮ったきり、黙った青木を薪は口を噤んだまま、彼が再び話し出すのを待った。
 下を向いたきり、一向こちらを向きもしない青木の腕と肩に隠れて良く見えない横顔を案じながら、青木の心が話すことを決めるのを待つ。
「…………薪さんも……お父さんになれるのにな、って思ったんです、普通に…結婚して、娘が出来たらあんな風に…舞にしたみたいに優しい良いパパになるのかな、って……」
 長く躊躇った後に、始まった青木の言葉に薪は瞬きした。
「可愛い奥さんとなら…こど、子供も、たくさんできて……そしたら薪さんはいつもあんな風に穏やかに笑って過ごせるのかな、って、おれ……」
 おれとじゃなかったら………
「だって、おれと薪さんじゃ、どんなことしても子供は生まれないし、考えてみれば薪さんみたいに優秀な遺伝子が、薪さんの代で途切れちゃうなんて、人類にとってすごい損失なんじゃとか、そう思ったらおれ……あなたから……」
 あなたからどれだけのものを奪ったのだろうか、と、とうとう青木はそれまで頑なに逸らし続けていた瞳を、自分のすぐ隣で自分を案じてくれていた薪の上に置いて、切り裂けそうな声で言った。

 朔の夜空を切り取ったような漆黒の青木の瞳は水のヴェールが掛かってしっとりと潤んでいた。切れ長の目元には水晶のような涙の小さな粒を載せて、それは青木の瞳を見返しながらゆっくりと、彼の額に薪が手を触れるとぽろりと零れ落ちて青木の硬く青ざめた頬の上を転がって行った。

 ばかだな、と笑うことを、薪はしなかった。
 それまで硬く自分の頭を戒めていた青木の手を解くと、両頬に手をやって、いじけてうな垂れた顔を上げさせた。
 それから、頬の上に走った涙の跡を手指で辿って拭った後に、自分のより随分大きな青木の頭を己の薄い肩の上に載せてやる。
 ソファのスプリングをきしりと鳴らして、青木は素直に薪がするのに従った。

「いつだったか…おまえにも読ませた本に書いてあっただろう?」
 頑是ない子供のような青木の、なのに自分より大きな背中を慰めるように繰り返し手で撫でてやりながら話し出した、薪の言葉の脈絡のなさに青木はぐすんと鼻を鳴らした。
「30億塩基対からできてるヒトのゲノムの99.7%は皆同じ、つまりたった0.3%の塩基配列の違いから個人差は生まれる」
 ゆっくりと小さな子供に教え聞かせるような優しい口調で薪は話す。
「ぼくとまったく同じ組み合わせのゲノムを持った者は世界中で誰もいないけれど、でも、ぼくと同じ遺伝子の塩基配列を持ったヒトは、世界中に無数にいるんだ」
 それはさっき、青木が嫉妬した薪の、幼子に絵本を読んだ時の様子とよく似ていた。
「それは、ぼくが生まれる何代も前の先祖から分岐した顔も知らない女の子の中にも、会うこともない遠い国の男の子の中にも、もしかしたら青木の中にも、ぼくが持っているのと同じ遺伝子は散らばっていて、それはぼくの体を介さなくても、次々に新しい世代へ受け継がれていく」
 薪のほっそりとした腕に包まれていた青木が小さく身じろぎするのに、気づいて薪がその戒めの力を解くと、さっきから俯き続けていた青木が体を起こして気まずそうに薪の顔を見返す。
「そのことを……ぼくはずっと恐ろしく思っていたけれど……」

 だって自分の全ては、自分の代で終わりにしてしまいたかった。脳に残された記憶も、心臓に刻まれた感情も、罪も汚れもすべての物思いも、己の死と共に霧散してしまうと、思えなければそれは例えようのない後悔のようで、どうしようもできない焦燥が薪を苛んでいたけれど。
「今は、違う……それは、青木が……」
 さっきまでは、恐ろしいものから逃げるように逸らしていたのに、薪の口から自分の名前を聞いて、今度は真っ直ぐに薪を見据えてくる青木の真っ黒の瞳を、薪は優しく見返した。
「安心しろ、子供は生さなくても、青木もぼくも、ぼくたちで終わりなんかじゃないから」
 それから、薪の言葉に驚いたように見開かれた、まだ水を含んで湿っていた青木の瞳の端に指をやって、そっと撫でる。
「ぼくや青木が居なくなったずっと未来で、ぼくと同じ遺伝子を持った子どもと青木と同じ遺伝子を持った子どもが出会うかもしれない、それはとても……」
 それ以上、言葉を継がずに、薪はそっと青木に口付けた。触れ合わせて、しかしすぐに離れてしまったキスは、薪の言葉の先を青木に教えるように甘美だった。







(終わりです)
すみません、怒らないで。

こちらは、遺伝子生物学の先生のご本とカムアウトゲイの息子さんに宛てたお母様のお手紙を参考にして書きました。すみません。


失礼しました。
ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。

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| 二次創作・「Passacaglia」 | コメント(2) | トラックバック(0) | |

この記事へのコメント

鍵拍手コメントくださったAさまへ


Aさん、こんにちは。
拍手コメント、ありがとうございました。いつもありがとうございますっ!!

薪さん・・・・・良いパパになると思うんですけど、ダメですか?だってほら、青木さんも育ててるし。←違う。

はい、Aさんがおっしゃったようなことをまさに妄想して書きました。
いつかまたね、薪さんと青木さんに似たひとたちが同じように出会って、思いを交わし合うことがあるかもしれない。そしたら良いな、と思ったのです。

薪さんは、きっと鈴木さんを亡くした直後は自分なんか霧散して何も残らなくなりたいと思っていたのではないかと思うのですよ、命を粗末にするのって、そうでしょう?違うかな?
でも、青木さんと会って、そうじゃなくなったら、自分の亡くなった未来のことにまで光を感じられるようになったらすてきだなと思って妄想しました、すみません・・・・

こんな偏執狂な話に拍手、ありがとうございました。

Aさんのまたのお越しをお待ちしております。

| みちゅう | URL | 2011.07.19 16:17 | 編集 |

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| | | 2015.06.27 15:32 |

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