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2008.04.01 06:00



こんにちは。

本日、リアル日付では、2011.06.03でございます。

6月になりまして・・・・・また「メロディ」が発売される月になったのね、と思いますと、先号を読み終えた直後には「二か月、長いよ~~~」と思っておりましたのに、もしや二か月なんてあっと言う間かも?なんて思い直して・・・・道理で年も取るってものです。


で、こんなの書いてすみません・・・・・
ちまちま書いていたのが肌寒い時期だったので、こんな話に。

あ、あと、めっちゃ長いんですよ(当社比、二倍くらい)、途中で嫌になられること受け合いなんですけど、すみません・・・・・


よろしくお付き合いを頂ければ、とってもうれしいです。


















 雨が降る前は空気の色が変わる。
 アスファルトからも植え込みの根元の土からも、一斉に雨の匂いがし始めて、だから薪には、雨は空から一方的に落ちてくるものではなく、地表にある水分たちも、天から舞い降りてくる同胞たちに出会うことが待ちきれないように、空に迎えに行くもののような気がした。

 土曜の午後、夕方を過ぎて、それまで透明だった大気が水で溶いた黄色に変わる。
 地面から匂い立つ埃の匂いに、雨の予感を、しかしどんな手立ても立てないうちに、雷鳴さえ間に合わないような性急さで、振り出した雨に薪はしっかりと濡れ切ってしまった。

「ちょ……っ、いったいどうして?」
 待ち合わせていた駅前で、まるで泳いできた後のような姿で現れた薪に青木は仰天した。
 その驚きに青ざめた頬を、不思議そうに薪が見上げる。

 降り始めよりは段分雨足は弱くなって、しかしまだ細かい雨が水のヴェールがなびくように降りしきっている空の下で、絹糸を撚ったような髪の毛先から、顎の先から、肩と指の先から、つららのように水の雫を滴らせたまま、そんな己の姿にはまったく頓着しない様子の薪に、青木は薪を待つ間自分が差していた傘を、彼を雨粒から守ろうとするように急いで差し掛けた。

「なんでこんなに濡れてるんですか?」
 今さら尋ねても、これ以上彼を雨に晒さないように努めても、すべて手遅れと承知して、でもどうしても聞かずにおれなくて、咎めるように青木が言う。
「寄りたい店があったから、二駅前で降りて……歩いてる途中で降ってきた」
 何でもないことのように返事をする、薪の手首を少し乱暴な仕草で取って、青木は彼の体を雨の掛からない軒の下へと引っ張っていく。
「傘は?」
「持ってなかった」
「電話くださればよかったのに」
「考えなかった」
「……………」
 ズボンのポケットから取り出したハンカチで、無駄だと知りつつ薪の、雨に冷やされてすっかり冷たくなって濡れた頬の上で玉を形作った水分をせめてと拭いながら、なのに濡れたことなど何ほどでもないと言いたげな薪に、青木は行き場の無い憤りを感じて黙り込む。

 休日の夜を一緒に過ごしたいと言い出したのは青木だ。
 昼間に済ませたいことがあるからと、薪が言ったのでじゃあ夕方にと、この場所での待ち合わせを決めたのも青木だ。
「久しぶりにおれの家にいらっしゃいませんか?タジン鍋買ったんで、ウチの駅で会って、買い物して帰って……」

 二人で過ごす時間を提案している時の青木の瞳が薪は好きだ。
 黒瑪瑙のような瞳を、期待と好奇心とで輝かせる純真は子供の持ち物のようで、屈託ないその純粋さをうつくしいと薪は思う。だからいつも、つい彼のその喜びに加担したくなってしまう。
 第九の執務室で、辺りを憚りながら交わした約束に、薪は瞬きしながら肯いた。

「……買い物して帰るんだっけ?」
 道を行くひとに、あまりの濡れ具合に迷惑がられながら、薪が青木に尋ねると、そんなのはもういいです、と青木には珍しく少し怒った口調で答えが返ってくる。
「このままじゃ薪さん、風邪引いちゃいますから」
 おれの家に直行しますよ、とそれだけ言うと、すっかり水を含んだ薪の肩を、抱き寄せて、傘を半分薪に差し掛けて身を寄せていた軒から出ようとする青木に、
「おまえも濡れるぞ?」
 自分のことはすっかり棚に上げて抗議する薪の声も聞こえない振りで、小雨の中を、薪を囲み込んだまま青木は駆け出した。

 走って来たから、本当なら体は温かくなっているはずなのに、青木のアパートに着いた時の、薪の唇も頬もすっかり青ざめていた。
 鍵を開ける手さえもどかしく、青木はやっと開いた玄関に自分より先に薪の体を押し込めると、
「靴脱いだら、そのまま……お風呂直行しちゃってください、場所、わかりますよね?」
「でも廊下が……」
「靴下脱ごうが、ここで裸にでもならない限り廊下は濡れますから、お気遣いなくっ!」
 降りかかった雨で自分の肩にも丸い水の染みを付けたのにも気づかず青木は、ずぶ濡れの自分が青木の部屋を汚すことを気に掛ける薪を浴室へと追い立てた。

 古くなったタオルで、かたつむりが作ったみたいな薪の通過の痕跡を拭いながら、青木が脱衣所と兼ねている洗面所へ行くと、薪は戸惑うように、まだ濡れた服をその肌に張り付けさせたままだった。
「濡れた服って、脱ぎにくいんだな……」
 非難するでなく驚きの色をのせた青木の瞳に、薪が言い訳めいたことを言いながら、仕方なく乱暴に、引き剥がすみたいに下ばきを脱ぐと、すこし屈んだ拍子にほっそりとした薪の顎の先から彼の頬を伝ってきた雨の名残りがぽたりと雫をたらして床の上を濡らす。
 青く血の浮いた膝の裏にも、揺れたシャッツの裾から垂れてきた水が珠のように転がっていく。
 細い足首も爪先も、すっかり湿っていつもより白く、いっそ痛々しいほどに見える。

「…………」
 ズボンを脇にのかして、次に水の重みを纏わせたシャッツを、皮を剥ぐように脱いで、たたみもせずに床に落とすと、水で束になった前髪の毛先からぱたぱたと透明な雫が落ちる。
 長くカールした睫の先にも、水の粒はしっかりと取り付いていて、薪が瞬きするたびに小さな丸いレンズがきらきらと室内灯を反射させている。
 寒そうな頬は、蝋をかけたように白くしかし滑らかで、白磁のようなその上を髪から零れた雨の残りが小さなカスケードのように伝っていく。

 その薪の様子は、古いおとぎ話の中から切り取られてきた麗人のようで、うつつとは思えないような色香を青木に感じさせて、
「薪さん……」
 だから青木は、急に己の中心を突き上げてきた情欲に、戸惑うように薪の名前を呼んだ。

「……………」
 己の名を呼ぶ、青木の声色に異質を感じて、薪は寒さに菫色になった唇と未だ雨粒の滴る顎で青木を振り返った。
 その、自分を見返す彼の琥珀色の瞳の、あどけなく澄んだ瞳の色に、青木は途端に自分が恥ずかしくなる。

 薪の瞳の、セピア色のスクリーンには、突然湧き上がった彼に対する性的な欲望の炎を内に秘めた青木の顔が映っている。
 それを隠そうとして、おもてはいつもと変わらぬようにみせているけれど、漆黒の瞳が熱を持って潤んでいるのが言い逃れできないほどはっきりと映り込んでいて、それはとても……とても薪に相応しくないような気がして、青木は思わず彼から目を逸らした。

 他人から、一方的に欲望のベクトルを向けられることを、薪は嫌悪している。
 狂ったその衝動が、たくさんの犠牲を払ったことを、誰よりもよく承知していたのが薪だったから。起因する己自体を嫌悪するほどに、恐れてもいる。
 青木はそのことを、薪以外ではただ一人、理解して、なのに彼を悲しませる己の内の情欲を、消せないことに、青木は自分が情けなくなってくる。

「……シャワー……使い方、わかりますよね……?」
 だからわざと、己の内の炎を冷ますように、青木は自分を今突き動かしそうな感情とは程遠い言葉を薪に掛ける。
「バスタブにお湯張る時間は無いので、もったいないですけど、温まるまでシャワーの」
 視線は薪の、白くほっそりとして、なのにしなやかな体躯からは逸らして、青木は言葉を繋ぐ。
「……あったかくなるまで、シャワー……浴びてくださいね?」
 いけない。彼は今、そんな心情ではないはずだ。だめだ、彼がそんな気持ちでないのに、自分の体がオンになってしまったこと、彼には隠しきれないとしても、いけない、それは、彼には相応しくないのだから、他のだれでもなく、おれだけは、彼を汚す情動を、押し付けてはいけないのだ。
 それは、彼の悲しみを肯定すること、彼のこれからを認めること。

 眉を歪めて、メガネのレンズの奥の瞳は情けない色にさせて、息を吐くことさえ苦しそうな青木に、
「青木………」
 気が付けば、雨に晒されていなかった肩から胸からも、雨の雫をその肌の上に転がした薪が、己の現在の恰好を頓着しない様子で青木に向き直る。
「あおき」
 ともう一度、呼ばれて青木は、それまで情けなく薪から逸らしていた瞳を躊躇いがちに彼の上に戻す。
 途端に、象牙の肌と、節々の少し桜色に染まった薪の体の、雨を纏ってその露をきらきらと光に反射させながら、琥珀の瞳はまっすぐに青木を見つめてくるのが目に入って、青木は急いでまた目を逸らすと、一層苦しそうに大きな息を一つ吐く。
「薪さん、おれ……」
 なのに薪は、青木の困惑などまったく関していないような軽い口調で誘うように言った。
「青木も濡れただろ?一緒にシャワー、しないか?」

「……………」
 思いもかけない薪の言葉に、青木は小さな漆黒の瞳を大きくして、それまで頑なに外していた視線を薪の顔の上に置く。
 青木が見返した、薪は薄っすらと笑っているようだった。

 少し顎を持ち上げて、細めた瞳は光が狭いところを通るときに輝きを強くするように、
「おまえだって……随分濡れてる」
 その薪の言葉に堪らなくなって、それ以上応えもせず、薪に背を向けかけた青木を、素早くその手首を捉えて薪は留めると、
「いいんだ」
 拗ねたように逸らされたままの青木の頬に、宥めるように声を掛けた。
「いいんだ、青木」

 なにが、と青木は訊かなかった。
 ほんの少しためらった後に、青木は逸らしていた体を薪に向け直すと、何も身に着けず、やせた小鳥のような薪の寒さで震えそうな体を、自分も濡れて彼を温めきれないとわかっても仕方なく、包み込むように抱き締めた。

 それから、大きな体を屈めて、自分よりも幾分の低い薪の唇に己の唇を近寄らせて、そっと口付けする。
 触れた薪の唇は、氷のように冷たく湿っていた。

 温めたい。
 衝動的にそう思って、青木は離したばかりの唇をまたすぐに薪の唇に重ねる。
 冷たさの残る唇を、割って中に熱を持った自分の舌を滑り込ませて、しかし青木はそれ以上、薪の口の中を蹂躙することを止して、耐えがたい衝動を押し留めて、彼の口を離すと、肩に置いた手で彼から距離を取り、
「すみませんでした……」
 また逸らした瞳で、やっとそれだけ言った。彼の横顔を、腕はまだ彼に戒められたまま薪はじっと見上げる。

 拗ねたような、青木の横顔は哀れだ。まるで捨てられた子供のように、よすがを失くして心許なそうに、本当はそんなこと全然ないのに、悲しそうな青木の瞳を見止めて、薪は少し考えた後に、わざとらしくくすりと笑みを漏らした。
「……一緒に居て、欲望を感じるのが自分だけだと思った?青木……」

 その言葉に、それまで彼から逃げていた、瞳を途端に彼の上に戻して、でも彼がその時どんな顔をしていたか確かめもせずに、青木は一端離した薪の肩を、今度はさっきの比ではないくらいの力で引き寄せ抱き締め自分の胸の内に収めると、薪の薄い肩の上に頬を押し付けながら、
「どうして、薪さんはそんな嘘を……」
 乾いた布を絞るように言った。

「嘘?」
 と繰り返した、薪の声にまたくすりと笑みが混じっていたことに青木は気が付く。
 薪の肩から離して、上げようとした頬を、薪に小さな両手に包み込むように捉えられて、冷えた指先を針のように感じながら青木は、今度は薪からの口付けを受けた。
 斜めから、自分のより大分大きい青木の唇を解かすように舐めると、驚いて開いた青木の唇の間に小さな舌を忍び込ませる。それから、遠慮の片鱗も感じさせない無礼さで、薪の舌が青木の口の中を辿る。自分の息を混ぜながら繰り返される、悪戯するみたいな薪の愛撫に、躊躇っていた青木の舌が我慢できずに応えだすと、今度はお互いの息を交換しながら、啜るように唇を吸い合えば、余した息は銀色の糸になって、今度は雨以外で薪と青木の肌を濡らす。

 いつの間にか、薪の体の青木に触れている、指と戒められた腕の部分だけがすっかり熱く変わったことに気づいて、名残惜しそうに青木は薪の唇から離れた。
 メガネの奥の、漆黒の瞳はさっき瞬間的に灯った情欲の色より、一層湿って彼の体の奥の熱の高さを薪に教える。
 その瞳に、そっと、彼との口付けのせいで熱くなった指先を触れさせながら、
「ぼくはだれのこともそんな気持ちにはさせたくないんだ」
 さっき、瞬間の感情で薪から離れようとした青木が懸念していた事柄を口にした。

「はい」
 と、己の心内を見透かされたような気がして、そう思えばさっきの口付けで熱くなった体も申し訳ないような気持ちになって、情けなく震えながら青木が頷く。
「ぼくの体で、だれもその気になんてしたくない……青木以外は」

「……………」
 小さな黒い瞳を瞬かせて、青木が薪の顔を見る。薪は薄っすらと笑っているようだった。
「雨の降りだす前には、雨の匂いがするだろう……?」
 突然始まった脈絡のない話に、青木は驚きの色を瞳に載せたまま首を傾げる。
「もうすぐ降り出すのがわかって、でも何もしないで当然雨に濡れて歩きながら、おまえのことを考えていた」
 瞳から、頬と顎を伝って白百合の蕾のような指先を、青木の肩に置きながら薪が言葉を次ぐ。
「雨の前触れがわかるように、青木のぼくを見る目が湿るのも、ぼくにはわかる」
 そしてそれは、おまえに限ってだけは決して嫌なことではないんだとそう言って、薪はまだ得心が行かず不思議そうな顔をしたままの青木の首の、つれるように筋の立った場所に唇を落とした。






(終わりです)
ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。

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この記事へのコメント

鍵拍手コメントくださったAさまへ


Aさん、こんにちは。
拍手コメント、ありがとうございました。

「誘い受け」!!!!!そんなこと、考えてもみませんでした、すみませんっ!!!!
でもでも、言われてみればそうですねっ、うん、薪さんったら、策略家なんだから←???

青木さんはねぇ・・・・・
ご飯の炊ける匂いでも薪さんに欲情しますから、ちょっとは我慢した方が良いんですよ。←????

失礼しました。

拍手、ありがとうございました。
Aさんのまたのお越しをお待ちしております。



| みちゅう | URL | 2011.07.13 15:57 | 編集 |

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